夏野菜が私に見えた人—?[百]

現代寿司漫画の代表作ともいえる『江戸前の旬』のスピンオフ作品『寿司魂』を読む。
コハダの幼魚である新子を握る力が強すぎ、お前は女の体にも触れたことがないのだろうと指摘された主人公に、ひとりの芸妓が自らの乳を差し出すのであった……。
寿司漫画には欠かせないといっていい、修業のために乳を揉むエピソードが『寿司魂』にも。文字通り一肌脱いだ(コハダだけに)芸妓のおかげで、乳、じゃなくて寿司を握る技に開眼するのである(←地口に拘りすぎて嫌らしくなってしまった文章の例)。
ちなみにもう一つの乳揉みエピソードがある寿司漫画とは、『鉄火の巻平』である。

いやあ、寿司漫画って面白いなあ。単なる料理漫画だと幅が広すぎる上にともすればオカルト方面に行ってしまいがちなのと、対決という図式からは逃れられないらしくて暑苦しい。元祖料理対決漫画である『包丁人味平』は面白いが、『美味しんぼ』はつまらない。
江戸前の旬』は、寿司の中でも江戸前寿司に拘ったところがまたよい。これは北海道という鮮度と質はほぼ常に一定の水準をクリアしているために食材の加工にはあまり手をかける必要がない、ある意味特殊な環境で育ったがゆえの感想かもしれない。『寿司魂』も含めると戦後日本の食文化における寿司の存在意義と歴史もよくわかるようになっている。まあ、まだどちらも最初の数巻しか読んでいないのだが。
ちなみに『寿司魂』の読みは「すしこん」が正しく、「すしだましい」と発音しているとすればそれはにわか寿司漫画ファンである。ファッション寿司漫画ファン、と言ってもいい。

ところでこの「ファッション○○」という言いかた、古くは「にわか○○」や「○○もどき」と言っていたのが「なんちゃって○○」を経て、今や「ファッション○○」となった。ではファッション分野における「にわか」や「もどき」は何と言えばいいのか。「ファッションファッション」か。
というのも、なんとなくCSを観たらREBECCABOØWYといったカスみたいな洋楽丸パクリのバンドの特集番組をやっていて、当時は形容しがたかったこの違和感もこりゃ今なら「ファッションバンド」の一言で解決だなーと漠然と思ったのである。

と、斯様に思考そのものが散漫としていた一日であった。